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Q: ひとりマイクロ法人を作って自分に給与を支払えば、法人の自分は人件費として経費に。個人の自分は所得控除が差し引かれて一粒で二度おいしい?

A: 発想はだいたい合っていますが、実務では"おいしさ"が薄まることが多いです

ひとり会社から自分に「役員報酬」を出せば――

✅ メリット(理論上の節税効果)

  • 会社側:役員報酬は損金(=経費)にできる※
  • ただし「定期同額給与」「事前確定届出給与」「(要件を満たす)業績連動給与」のいずれかに当てはめること
  • 不相当に高額だとその超過分は経費にできません(国税庁
  • ※昔あった「給与所得控除相当額を損金不算入にする」特殊支配同族会社ルールは2010年以降廃止(田中税務署

  • 個人側:もらった報酬は「給与所得」になり、給与所得控除+基礎控除が使えます

  • 2025年分から最低の給与所得控除は65万円に引上げ
  • 基礎控除も最大95万円に拡充(合計所得に応じて段階)(国税庁

…という意味で「一粒で二度おいしい」は事実です。

⚠️ 落とし穴(ここがコスト)

1. 社会保険が原則マスト

  • 法人は強制適用事業所。役員に報酬を出すなら健康保険・厚生年金に加入(会社負担と本人負担の両方が発生)
  • 厚生年金の料率は総額18.3%(会社と個人で折半)
  • 健康保険(協会けんぽ)は都道府県ごとに毎年変動(年金ポータル
  • ※本業の会社でも社保加入していて報酬を2社から受けるなら、二以上事業所の手続きが必要で、報酬を合算して保険料計算されます(年金ポータル

2. 雇用保険は原則入れない

  • 代表取締役などの役員は雇用保険の適用外(例外の"使用人兼務役員"は厳しめの実態要件)(厚生労働省

3. 赤字でも固定の法人住民税(均等割)

  • 小規模でも年7万円程度はほぼ発生(都道府県2万+市町村5万のイメージ。自治体で差あり)(やよい株式会社

4. 形式要件と否認リスク

  • 役員報酬は「定期同額」などのから外れると損金にできません
  • 同族会社の過度な節税スキームは法人税法132条の行為計算否認で切られることがあります(国税庁

5. 源泉徴収・届出の手間

  • 給与支払事務所の届出、源泉税の納付(※納期の特例申請で年2回納付にできる)など、事務負担が増えます(eiwa-tax.com

💰 ざっくり目安(個人税だけ見た"甘さ"のイメージ)

2025年分は「給与所得控除65万円+基礎控除(最大95万円)」の組合せ。たとえば役員報酬が年160万円前後だと、給与所得控除後95万円・基礎控除95万円で所得税がゼロになり得るレンジ。

ただし、社会保険の負担(会社・個人ともに)が別途ガッツリ来ます。

📊 結論(使いどころ)

  • 会社の利益が出ていて、報酬×社保×法人均等割×事務コストを乗せてもトータルで得、という設計にできるなら有効
  • 一方、すでに本業会社で厚生年金・健保に加入中なら、二以上事業所の合算で保険料が上がりやすく、"二度おいしい"どころか逆に重くなるケースもしばしば

✅ 始めるなら最低限ここを押さえる

  1. 役員報酬は年度当初に決めて定期同額で運用(変更は原則期首3か月以内)(国税庁
  2. 源泉徴収の届出&(できれば)納期の特例を申請(eiwa-tax.com
  3. 社会保険の新規適用・資格取得、本業とダブルなら二以上事業所届年金ポータル
  4. 金額は不相当に高額にならない水準で(同族会社の否認にも注意)(国税庁

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