Q: 役員報酬が年500万円のケースだと、所得控除(個人)>社会保険(ひとり法人)になる?¶
A: 結論から言うと、その"大小関係"だけ見ればほぼその通りです。でも設計判断としては早計¶
数字でざっくり確認します。
📊 前提条件¶
- 役員報酬:年500万円(賞与なし想定)
- 計算年度:2025年分
💰 個人側の所得控除¶
給与所得控除(2025年)¶
収入が360~660万円帯なので: - 500万×20%+44万=144万円(フリー株式会社)
基礎控除(2025年改正)¶
合計所得が356万円(=500万−144万)なので: - 該当レンジの68万円(国税庁)
⇒ 個人側で所得から差し引ける主な控除の合計: 144万円+68万円=約212万円
🏢 会社側の社会保険料(事業主負担)¶
標準報酬月額およそ41~42万円相当として:
厚生年金¶
- 総率18.3%の半分=約9.15%(会社負担)(年金ポータル)
健康保険¶
- 協会けんぽの都道府県率の半分(神奈川は毎年改定、2025年度も告知あり)
- 40~64歳ならさらに介護保険分も半分上乗せ(協会けんぽ)
ざっくり年額にすると、会社負担だけで70~75万円前後(介護保険該当で少し増)。
⚖️ 比較結果¶
この比較だけなら、個人の控除(約212万円)> 会社の社保(約70万円)で、"控除の方が大きい"のは事実です。
⚠️ ただし、ここが重要¶
1. おカネの性質が違う¶
| 項目 | 個人の控除 | 会社の社保 |
|---|---|---|
| 効果 | 課税所得を減らす効果 | 現金支出(損金) |
| 実際の現金 | 現金が増えるわけではない | 現金が出ていく |
| 税額への影響 | 税額が下がるだけ | 同額程度の本人負担も毎月天引き |
| 控除として | - | 個人側でも社会保険料控除として差し引ける |
(年金ポータル)
2. ダブル加入の落とし穴¶
本業の会社でも社保加入中で、マイクロ法人からも報酬を取ると: - 二以上事業所の合算になる - 保険料は合算報酬で計算 - 個人の手取りが想定より減りやすい(年金ポータル)
3. 固定コスト¶
- 赤字でも法人住民税の均等割(年間数万円)が発生
- 源泉徴収・年末調整・届出などの事務コストも無視できない
📝 まとめ¶
✅ 正しい部分¶
「500万円報酬なら、控除の額面>会社負担の社保」は概ね正しい見立て
⚠️ 注意すべき点¶
ただし意思決定は以下の合算で判断するのが筋: - キャッシュアウト(会社負担+本人負担の社保、均等割、事務負担) - 実効手取り - 法人の節税効果
💡 実際のシミュレーションのポイント¶
もし、以下の情報があれば、実効手取り/税負担のフル試算が可能です: - 本業報酬額 - 年齢(介護保険の有無) - 居住地(県料率) - 法人側の想定利益
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Monerionでは、これらの要素を総合的に考慮した試算ができます。単純な控除額の比較だけでなく、実際のキャッシュフローへの影響を確認してみてください。