はじめに:Google Ads APIの全体像を理解する
Google広告の運用を自動化したい。データ分析を効率化したい。そんなニーズに応えるのがGoogle Ads APIです。しかし、導入手順は複雑で、多くの開発者が初期設定で躓いています。
本記事では、マネージャーアカウント(旧MCC)の準備からDeveloper Token申請までの具体的な手順を、実際の画面フローに沿って解説します。
重要: 旧称のAdWords APIは2022年4月に廃止されました。現在はGoogle Ads APIが正式版です。
なぜ親子アカウント構成が必要なのか
Google Ads APIを利用するには、以下の2階層構成が推奨されます:
親アカウント(マネージャーアカウント)
- Developer Tokenの申請・管理を行う
- 複数の子アカウントを統括管理
- APIアクセスの中心的な役割
子アカウント(運用アカウント)
- 実際の広告配信・課金が発生
- APIで操作する対象アカウント
- テスト用と本番用を分けることを推奨
この構成により、権限管理の明確化と安全なテスト環境の構築が可能になります。
押さえるべき用語と最新仕様
APIを扱う前に、以下の用語を正確に理解しましょう:
| 用語 | 説明 | 注意点 |
|---|---|---|
| マネージャーアカウント | 親アカウント(旧MCC) | Developer Token申請はここで行う |
| Google Cloud プロジェクト | API有効化とOAuth設定の場所 | 課金設定は不要(Ads側で課金) |
| Developer Token | API利用の認証キー | 申請から承認まで数日〜数週間 |
| OAuth 2.0 | ユーザー認証方式 | サービスアカウントは使用不可 |
| Basic アクセス | 初期のAPIアクセスレベル | 本番運用には十分な権限 |
導入の全体像:5つのステップ
Google Ads API導入は、以下の5ステップで進めます:
ステップ概要
- 親子アカウント構成の準備
- Google CloudでAPI有効化
- Developer Token申請(← 前編はここまで)
- OAuth認証設定(後編で解説)
- Pythonでの接続確認(後編で解説)
各ステップには依存関係があるため、順番通りに進めることが重要です。
ステップ1:親子アカウント構成の準備
1-1. マネージャーアカウントの作成
- Google広告マネージャーアカウントにアクセス
- 「マネージャーアカウントを作成」をクリック
- アカウント名と用途を入力(例:「API管理用マネージャー」)
- タイムゾーンと通貨を設定
1-2. 子アカウントの準備
既存のGoogle広告アカウントを使用するか、新規作成します:
- 既存アカウントをリンク: アカウント設定 → アクセスとセキュリティ → マネージャーアカウントをリンク
- 新規作成: マネージャーアカウントから「+」ボタンで子アカウント作成
1-3. アカウントIDの確認と記録
APIで使用するため、以下の形式でIDを控えます:
親アカウントID: 123-456-7890 → 1234567890(ハイフン除去)
子アカウントID: 987-654-3210 → 9876543210(ハイフン除去)
注意: APIではハイフンなしのIDを使用します。
ステップ2:Google CloudでGoogle Ads APIを有効化
2-1. Google Cloudプロジェクトの作成
- Google Cloud Consoleにアクセス
- 新規プロジェクト作成(プロジェクト名例:「google-ads-api-project」)
- プロジェクトIDを記録
2-2. Google Ads APIの有効化
# Cloud Shellまたはローカルで実行
gcloud services enable googleads.googleapis.com
または管理画面から: 1. APIとサービス → ライブラリ 2. 「Google Ads API」を検索 3. 「有効にする」をクリック
2-3. OAuth同意画面の設定
- APIとサービス → OAuth同意画面
- ユーザータイプ:「外部」を選択(個人利用でも)
- 必須項目を入力:
- アプリ名:「Google Ads API Client」
- サポートメール:開発者のメール
- 承認済みドメイン:(スキップ可)
2-4. OAuthクライアントIDの作成
- APIとサービス → 認証情報 → 認証情報を作成
- 「OAuthクライアントID」を選択
- アプリケーションの種類:デスクトップアプリ
- 名前:「Google Ads API Desktop Client」
- 作成後、Client IDとClient Secretをダウンロード
ステップ3:Developer Tokenの申請(Basicアクセス)
3-1. APIセンターへのアクセス
- 親(マネージャー)アカウントにログイン
- ツールと設定(レンチアイコン) → 設定 → APIセンター
3-2. Developer Token申請フォーム
以下の情報を準備して申請します:
必須記入項目
- 連絡先情報: 開発者のメールアドレス
- 利用目的: 具体的なユースケース(例:「自社広告の自動レポート生成」)
- 想定API呼び出し回数: 月間の概算(例:「10,000回/月」)
- ポリシー遵守の確認: 全項目にチェック
審査を通りやすくするポイント
- 具体的な利用目的を明確に記載
- 商用利用の場合は事業内容を説明
- 少額でも広告出稿実績があると有利(必須ではない)
3-3. 審査期間と状態確認
- 審査期間: 通常3-7営業日(場合により2週間程度)
- 状態確認: APIセンターで「承認待ち」→「承認済み」に変化
- テスト利用: 承認待ちでも、テストアカウントでの動作確認は可能
まとめと次回予告
前編では、Google Ads API導入の基礎となる以下を解説しました:
- ✅ マネージャーアカウントと子アカウントの準備
- ✅ Google CloudでのAPI有効化とOAuth設定
- ✅ Developer Tokenの申請方法
これらの準備が整えば、APIを使用する土台は完成です。
後編では、以下の実装部分を解説します: - OAuth認証でRefresh Tokenを取得する方法 - Pythonでの接続確認スクリプト - Claude CodeやCodex CLIを活用した効率的な実装
技術的な実装に入る前に、本記事の手順でしっかりと基盤を整えましょう。