はじめに
「この案件、条件はイマイチだけど、断ったら今後の関係が...」
フリーランスなら誰もが経験するこの葛藤。全ての案件を引き受けていたら、品質も健康も維持できません。
しかし、多くのフリーランスが「断る技術」を身につけていないため、以下のような問題に陥りがちです:
- 品質の低下: 過度な案件で手抜き工事になる
- 健康の悪化: 睡眠不足とストレスの蓄積
- 成長の停滞: 新しいスキル習得の時間がない
- 関係の悪化: 結局、期待に応えられず信頼失墜
実は、適切に断ることで、より良い案件と成長機会を引き寄せることができるのです。
今回は、フリーランスが持続可能に成長するための「案件選別フレームワーク」と「関係を壊さない断り方のテンプレート」をご紹介します。
案件評価の4軸フレームワーク
基本となる評価軸
案件を受けるかどうかの判断は、以下の4つの軸で評価します:
1. 報酬(Revenue): 時給換算での適正性 2. 成長性(Growth): スキルアップへの貢献度 3. 相性(Compatibility): クライアントとの相性 4. 工数(Effort): 必要な時間と労力
具体的な評価方法
マトリクス評価シート:
案件名: [案件名]
評価日: [日付]
報酬(Revenue) : [1-5点] 時給3000円以上=5点
成長性(Growth) : [1-5点] 新技術習得=5点
相性(Compatibility): [1-5点] コミュニケーション良好=5点
工数(Effort) : [1-5点] 通常業務時間内=5点
合計: [ /20点]
判断基準
即受注(16点以上): 迷わず受ける 要検討(12-15点): 条件調整を試みる 原則断り(11点以下): 丁寧にお断り
実例での評価
例1: Webサイト制作案件
報酬: 3点(時給2500円、やや低い)
成長性: 4点(新しいフレームワーク使用)
相性: 5点(レスポンスが早く、要件明確)
工数: 4点(2週間、適度な規模)
合計: 16点 → 受注決定
例2: データ入力案件
報酬: 2点(時給1500円、低い)
成長性: 1点(単純作業、学びなし)
相性: 3点(普通)
工数: 2点(膨大な量、長期拘束)
合計: 8点 → お断り
断りの3段階テンプレート
段階1: 即断り(丁寧な辞退)
シンプルな断り方:
[クライアント名] 様
お忙しい中、貴重なお話をいただき、ありがとうございます。
検討させていただきましたが、現在進行中のプロジェクトとの
スケジュール調整が困難なため、今回はお引き受けできません。
せっかくお声がけいただいたにも関わらず、申し訳ございません。
今後とも何かございましたら、お気軽にご相談ください。
[あなたの名前]
ポイント: - 感謝の気持ちを必ず表現 - 理由は「スケジュール」に統一(相手を傷つけない) - 今後の関係継続への意欲を示す
段階2: 条件付き断り(代案提示)
条件調整の提案:
[クライアント名] 様
ご相談いただいた件について検討いたしました。
現在の条件では難しいのですが、以下のような調整は
いかがでしょうか?
■ 納期について
現在: 2週間 → 提案: 3週間
■ 作業範囲について
現在: フルカスタム → 提案: テンプレート活用
これらの調整により、品質を保ちながら対応可能となります。
ご検討いただければ幸いです。
[あなたの名前]
段階3: 将来への布石(関係性重視)
今後につなげる断り方:
[クライアント名] 様
魅力的なプロジェクトをご提案いただき、ありがとうございます。
今回は既存案件のため難しいのですが、
○月頃から新規案件の受付を再開予定です。
その際は、ぜひ優先的にご相談させてください。
今回のような面白いプロジェクトでしたら、
喜んでお手伝いさせていただきます。
[あなたの名前]
断った後のフォローアップ術
1. 定期的な近況報告
3ヶ月に1回程度:
件名: 近況報告とご挨拶
[クライアント名] 様
いつもお世話になっております。
以前お声がけいただいた案件の件で、その後いかがでしょうか?
順調に進んでいらっしゃることと思います。
私の方は[簡単な近況]という状況で、
○月頃から新規案件の相談が可能な予定です。
また何かございましたら、お気軽にご連絡ください。
2. 有益な情報の提供
業界情報や技術動向の共有: - 関連する記事や情報の紹介 - 他の信頼できる専門家の紹介 - 無料で提供できる簡単なアドバイス
3. 紹介による関係強化
適切な人材がいる場合:
先日の件ですが、私よりも適任の方をご紹介できます。
○○さんという方で、[簡単な紹介]です。
ご希望でしたら、お繋ぎいたします。
認知負荷を減らすシステム化
判断基準の明文化
個人的な案件選別ガイドラインを作成:
# 私の案件選別基準
## 必須条件
- 時給2500円以上
- 合法的な業務内容
- 明確な要件定義
## 優遇条件
- 新技術の習得機会あり
- 長期的な関係構築可能
- 自分の得意分野
## 断る条件
- 時給2000円未満
- 無理な納期設定
- コミュニケーション不良の兆候
テンプレートの準備
よく使う断り文を事前準備: - スケジュール理由 - 専門外理由 - 条件調整提案 - 将来の可能性言及
判断時間の短縮
24時間ルール: - 案件の打診を受けたら24時間以内に判断 - 長時間悩むほど判断が鈍る - 直感的な判断を信頼する
まとめ:断ることで生まれる余白の価値
フリーランスの「断る技術」は、単なる案件選別ではありません。自分の価値を守り、持続可能な成長を実現するための重要なスキルです。
今すぐ実践できること:
✅ 4軸評価フレームワークの導入: 次の案件から評価シートを使用
✅ 断りのテンプレート準備: 3パターンの文面を事前作成
✅ 判断基準の明文化: 自分なりのガイドラインを作成
✅ 24時間ルールの実践: 素早い判断で認知負荷を削減
断ることで得られるもの: - より良い案件への集中 - スキルアップの時間確保 - 健康とワークライフバランス - 長期的な信頼関係の構築
適切に断ることで生まれる余白が、次のステージへの成長機会となります。
「全てを引き受ける」から「価値ある案件を選ぶ」へ。この転換こそが、フリーランスとして持続可能に成功する鍵なのです。
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